このブログは「小金井発!芸術文化を書くこと/伝えること講座」運営の一環として、東京大学大学院人文社会系研究科文化資源学研究室小金井プロジェクトチームによって運営されています。
ここではプロジェクトメンバーが見つけた「芸術文化を書くこと/伝えること」の情報を収集&発信していきます!
フリーペーパーやウェブサイト、文献の紹介。公募の執筆情報やレクチャーなど「書く場所」情報。もちろん講座の様子も…
プロジェクト内だけで留めておくにはもったいない!そんなもったいない精神に支えられ、ほぼ毎日更新中です!!
お問合せはこちらまで

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

高校生のアートライティング

 今回は、学校教育の場において、「アートライティング」(芸術について書くこと、批評)に取り組んでいる事例を紹介します。
 富山県・高岡第一高校では、1994年以来14年間に渡って、美術の時間にアートライティング教育が行われてきました(*1)。
 高岡市は、加賀藩・前田家の城下町として近世以来栄えてきた商工業都市で、高岡銅器・高岡漆器などの伝統工芸を誇り、現在はアルミ・銅器類の産業で全国的に知られています。また近隣の井波地域(現・南砺市)は、「井波彫刻」として伝統的に木彫がさかんな地域で、現在でも伝統工芸の育成と発展に努めています。伝統を基盤とした現代芸術(とりわけ野外彫刻)の展開にも目を見張るものがあり、1991年から継続されている「いなみ国際木彫刻キャンプ」は、世界各国から彫刻家たちが集い、制作と交流を行う場となっています。
 かくのごとく、連綿と継承される伝統工芸の上に、同時代の芸術が地域に根づいて発展しているこの地において、高岡第一高校で美術の授業を担当する松尾豊先生は、生徒たちが身近な生活空間の中で日常的に美術に触れ、生涯を通じて美術と関わっていくことを目指す、「生涯美術論構想」(*2)を唱えました。そのため、生涯美術に関する授業を、美術のカリキュラムの中に取り入れることにしたのです。高岡第一高校の美術の授業は、1・2年生の2年間に渡って行われてきましたが、そのうち2年生の3学期は、実技・制作に代わって、鑑賞と批評・地域文化と生涯美術の講義に当てられることになりました。前年度(平成19年度=2007年4月~2008年3月)までは、特進コース生も含め、主に1年生の3学期にアートライティングを実施しております。

「地域文化と生涯美術」(1994年~)
 この授業では、まず前半に地域文化に関する鑑賞・批評を行います。VTR「日本の巨匠」シリーズから、地元・富山県作家や縁の深い作家のものを選んで、まず生徒に鑑賞してもらいます。「ワザありにっぽん!!『梵鐘に生命を吹き込む』」、「炎の芸術 高岡銅器」、「青貝塗」「勇助塗」「彫刻塗」「蓮田修吾郎」「帖佐美行」「清水九兵衛」「佐藤忠良」「圓鍔勝三」「高橋節郎」(*3)などのビデオ映像です。その後、作家やその作品についての批評を、生徒各自が文章によって試みる、という流れになります。2001年からはビデオ鑑賞だけではなく、校外学習として、地場産業センターや高岡銅器団地内の老子製作所などの展示や制作の現場を実際に訪れ、参加体験的な鑑賞学習が行われてきました。

 後半では「地域文化論」として、高岡銅器や井波彫刻など、地域に根ざした文化の歴史と現状について講義が行われます。そして、アンケートの実施を経て最後には、生涯を通じて美術と関わっていくための「生涯美術論」で締めくくられます。具体的内容は以下の
 ①作家になる方法
 ②美術館や文化ホールなどの鑑賞利用の仕方
 ③公民館や各種文化教室での実技系サークルの楽しみ方
 ④身近な公共空間にあるアート作品への接し方
 ⑤地域の文化行政への理解や提言の仕方(*4)  などです。
この講義では、芸術文化の作り手・支え手・鑑賞者・批評者など、アートに対する多様な関わり方が紹介され、生徒たちが高校を卒業した後も、自分らしいやり方で生涯アートに向き合っていくきっかけが提供されているのです。

高岡現代彫刻オリエンテーリング(1996年~)
 これは、主に1年生を対象に夏休みの鑑賞学習として出発したものですが、その当初は、1学期の後半の授業で、市内の野外彫刻を紹介・解説した上で、生徒がマップを片手に実際に現地へ赴き、彫刻の鑑賞・評価をします。現在は、4~5月の連休中に実施しております。
自分たちの生活空間の中にある野外彫刻を身近に感じてもらい、生涯に渡ってアートと関わるきっかけを提供することが、このオリエンテーリングの目的です。

matsuo22-0_clip_image006.jpg
「高岡現代彫刻オリエンテーリング」(C)Matsuo Yutaka

 このように、高岡第一高校では1994年以来、美術の授業におけるアートライティングが積極的に取り組まれてきましたが、最近の動向として、高校生のためのアートライティング教育は大いに注目されています。筑波大学では2005年から、「芸術環境形成支援のためのアート・ジャーナリスト養成プロジェクト」が開始され、その一環として「高校生アート・ライター大賞」が制定されました。高岡第一高校や筑波大学など、これらの取り組みを手がかりに、アートライティング教育の拠点が形成され、今後の全国的なアートライティング教育の普及・発展が期待されます。(SA)

【註】
*1:松尾豊「パブリックアート・地域文化研究、そしてアートライティングの可能性 」第1回アートライティング教育研究会、筑波大学大学院・美術科教育学会東地区会共催、 2006年
*2:同「生涯美術論事始」『大学美術教育学会誌』第33号、2001年
*3:同「生涯美術論(Ⅱ)」『大学美術教育学会誌』第36号、2004年
*4:前掲

【関連リンク】
パブリックアート(PublicArt)へのメッセージ
http://www.take.co.jp/art/public/message/index.html
芸術環境形成支援のためのアート・ジャーナリスト養成
http://www.geijutsu.tsukuba.ac.jp/~aes/pages/aj.html

この記事へのトラックバックURL
http://koganeikouza.blog21.fc2.com/tb.php/81-a355ab63
この記事へのトラックバック
この記事へのコメント
管理者にだけ表示を許可する
 
 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。