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『百歳回想法』 文・黒川由紀子 写真・小野庄一

ご存知の様に、回想法は1960年代にアメリカの老年精神化医バトラーが創始した、高齢者に対する心理療法だ。「高齢者の回想に、良き聴き手が共感的な姿勢で、心をこめて聴きいること」で高齢者が「生きてきた意味を再考し、自尊心を高める」という心理学的な意味がある。自身の人生を振り返るという点では自分史と同じだが、自分史が一人静かに書くのとは対照的に、回想法では挫折や悲しい出来事の語りでさえ、聴き手がいることで、孤独にならない。

そんな回想法の本の中でも、本書はとても読みやすい。何しろ98歳から104歳までの5人のお年寄りが一同に会して回想した記録であり、高齢者のポートレイトを撮り続けてきたプロの写真家が撮った5人の方々の写真がたくさん入っているのである。その皆さんのお顔の素晴らしいこと!100歳という年輪を重ねてきた、穏やかさと秘められた悲しみと、慈愛にあふれた、澄んだ瞳。今なお、好奇心と無邪気さを兼ね備えたようなその表情。ずっと眺めていても飽きない。そして語る言葉も、それぞれに含蓄があり、深い。


本書の中で繰り返し指摘されているのだが、回想法では「他人の過去に土足で踏み込まない」ことを大切にし、回想されない選択肢を常に準備している。自ずと語られることは大事に受け取っても、語られないことを無理に聞き出すことは行なわない。時が熟すプロセスを静かにゆっくりと味わう。そんな時、たった一語の言葉が、物語以上の重みを持つという。


また、多くの人が自分の体験を伝えたい、語りたいと思っているのは事実である。それなのに、聴いてもらえない、軽視または無視され続けると、人はあきらめ、やがて沈黙する。その時の沈黙とは上の沈黙とは別のもので、両者は入念に区別され、語りたくなったらいつでも聴ける体制を作っておく。やがて堰を切った様に語り始める高齢者もいるという。


日本での回想法の第一人者でもある著者は、回想法はまた、私たち後輩にも、実り多いひと時を与えてくれると言う。だから、「私たちのまわりの年長者がふと口にする言葉を、ふと語る物語を、もっと大切に、もっとわくわくしながら、耳を済ませて」聴けば、「私たちが未来に夢と希望と発見と遊び心をもって、たった1回限りのワンダーランドを生きる可能性が広がる」と説く。


本書には、5人の回想の記録、解説の他に、家庭で簡単にできる回想法のやり方も載っている。折りしも、もうすぐ「敬老の日」。5人の素敵な笑顔の写真を見ていると、私もどなたか、年輪を重ねてきた年長者の語りを、じっくりと聴きたくなってくる。緊張やあきらめという魔法が解けたら、きっと人生の機微や叡智が煙の様に立ち昇ってくるのだろう。


少し大きな本で、小金井市の図書館には置いていないようですが、ぜひ手にとり、ページを開いてみてください。500年分の年輪を讃えた笑顔に、あなたも絶対やられます!(IS)


『百歳回想法』 文・黒川由紀子 写真・小野庄一 ソトコトClassics 2003年9月 木楽舎

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